歯学研究科の研究の特徴
インターフェイス口腔健康科学とは?
(Interface Oral Health Science, since 2002)
「インターフェイス口腔健康科学」の誕生
それまで歯学(歯科医学)として認識されてきた学問体系は口腔疾患の治療論が主体であり、その病因論や根本となる基礎歯学は細分化され、体系化からはほど遠いものでした。2002年私たちは、細分化されてしまった個々の専門分野を繋ぎ、口腔科学として体系化、すなわち再構築するために、「インターフェイス口腔健康科学」を提唱しました。
口腔は、「歯・粘膜・骨・筋等の口腔組織(生体)」、「口腔に共生するマイクロバイオーム」、「生体材料(バイオマテリアル)」の3つのシステムから成り立ち、この3システムに咬合力に代表される「生体応力(メカニカルストレス)」が加わることが特徴です。「インターフェイス口腔健康科学」とは、『健全な口腔機能は、システムとシステムの接するところ、すなわちインターフェイスが生物学的および生体力学的に調和することで成り立っており、う蝕や歯周病、顎関節症などの口腔疾患はこれらシステム間インターフェイスの破綻によって生ずる「インターフェイス病」として捉えられる』という新たな概念に立脚するものです。
加えて、口腔そのものが、体内と外界とのインターフェイスであり、誤嚥性肺炎や消化管感染症等の口腔関連疾患もまたシステム間インターフェイスの破綻に起因すると理解されます。さらに、口腔の健康は社会の中で増進され、そのためには、社会との健全なインターフェイスが不可欠です。
「口腔のインターフェイス」から「学問のインターフェイス」、そして「社会のインターフェイス」へ
この概念は、口腔科学・歯科医療・口腔保健の領域を網羅するだけではなく、医学、工学、材料学、農学、薬学など多岐にわたる学問領域に通ずるものであり、「インターフェイス口腔健康科学」の実践によって歯学研究のさらなる推進、そして関連領域との学際的研究の活発化が可能となります。2007年には文部科学省から「生体-バイオマテリアル高機能インターフェイス科学推進事業」が認められ、東北大学金属材料研究所等とともに、インターフェイスの制御を目指した新しいバイオマテリアルの研究・開発と臨床応用に取り組みました。2012年からは「生物-非生物インテリジェントインターフェイスの創成事業」が後継として実施されました。これらは、既存の学問分野を接合し新しい学問を創成するという「学問のインターフェイス」の具現化なのです。
さらに、健全な口腔機能を地域社会や国際社会で実現するためには、地域社会や国際社会との双方向コミュニケーションが不可欠です。すなわち、地域住民の口腔健康状況を把握しそこにある問題点を解決し地域に還元すること、海外の口腔保健状況を把握し必要なことを導入するとともに、海外と連携し日本の研究成果を国際社会に還元することが必要なのです。
本研究科は、2011年に「歯学イノベーションリエゾンセンター」を設置し、これまでの「縦割り」では難しい、研究・教育・保健医療における異分野融合、国際連携、地域連携の要としました。国際連携では、アジア(27大学)、ヨーロッパ(4大学)、北米(2大学1研究所)、オセアニア(1大学)の各国の基幹校との、国内連携では、金属材料研究所、医工学研究科、工学研究科、農学研究科等との学内機関はもちろん、東京工業大学等との学外機関との共同研究・教育が活発です。さらに、国や地方自治体等との連携を通した社会との連携も強固です。これらの活動は、2013年に文部科学省事業「マルチモーダル歯学イノベーションプログラム」として認められ、2020年からはその後継事業が継続しており、「地域社会・国際社会とのインターフェイス」として、大きな役割を果たしているのです。
「インターフェイス口腔健康科学」の世界への発信
「インターフェイス口腔健康科学」の概念は、現在、次世代の歯学・口腔科学として国内外に広く認められています。2005年には仙台にて「第1回インターフェイス口腔健康科学国際シンポジウム(International Symposium for Interface Oral Health Science:IS-IOHS)」を開催し、国内外から多くの研究者が集まりました。その成果は英文書籍としてまとめられ世界に発信されています。以来、本シンポジウムは約2年毎に開催され、2024年には第10回目を迎えました。仙台の地に加え、ハーバード大学フォーサイス研究所(米国)、北京大学(中国)、ソウル大学(韓国)、シドニー大学(オーストラリア)、四川大学、福建医科大学(中国)、チュラロンコーン大学(タイ)、国立台湾大学(台湾)等との共催で、海外シンポジウムも定期的に開催し、世界展開を実現しています。およそ四半世紀前に始まった「インターフェイス口腔健康科学」は、異分野融合、国際連携、地域連携を経て、国際教育や食の学問「食学」の創生といった展開を見せながら、国際卓越研究大学という新たな仕組みの中で、ますますその広がりを示しています。その基盤は、歯学・口腔科学の独自性と他の学問領域との普遍性を持つ独創的な研究への希求、そこに集う研究教育者と大学院生の情熱、そして国際的・学際的・融合的研究への指向という、歯学研究科が持つ特質にあるのです。
