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口腔生化学分野

分野の紹介

歯・歯肉・舌など多彩な組織からなる口腔は、常に唾液で覆われ、外界からは様々な食べ物が入ります。加えてそこには口腔バイオフィルム(歯垢)という形で天文学的な数の微生物が住み着いています。こうして口腔はホスト(ヒト)とパラサイト(微生物)が共生する生態系を形作ります。しかし、時として口腔生態系のバランスが崩れ、齲蝕、歯周病、口臭などの口腔疾患が起きてしまうのはなぜでしょうか?

本分野では、口腔バイオフィルムと疾患との関係を、分子生物学的手法、嫌気実験システム、オミクスといった最先端の手法を用い、口腔生態系の視点から研究しています。さらに基礎研究成果を活かし、キシリトールやフッ化物の齲蝕予防効果、パラサイトによるバイオマテリアルの劣化といった臨床に繋がる研究や、齲蝕予防食品の検定といった社会へ繋がる研究を進めています。近年では、パラサイトとの類似が指摘されている癌細胞の代謝研究も始まりました。

口腔の健康はホストとパラサイトが健全に共生することで成り立ちます。口腔生化学分野は、共生する相手(パラサイト)の研究を通して、口腔の健康の維持・増進を目指しています。歯学部出身の方はもちろんのこと、これまでに管理栄養士、薬剤師、臨床検査技師の方々が大学院生として在籍しており、多様な人材との健全な共生も得意としています。

教員構成

主な研究テーマ

  • 口腔バイオフィルム生態系のゲノミクス、プロテオミクス、メタボロミクス
  • 嫌気実験システムを用いた齲蝕、歯周病、口臭関連菌の代謝活性および病原性
  • フッ化物や糖アルコールの齲蝕予防機序および微小pH電極テレメトリー法による食品や甘味料の齲蝕誘発性評価
  • 口腔バイオフィルムによる歯科用バイオマテリアルの生物学的劣化
  • 口腔がん細胞を含むホスト細胞の代謝研究

最近の業績

  1. Shinohara Y, Washio J, Kobayashi Y, Abiko Y, Sasaki K, Takahashi N.
    Hypoxically cultured cells of oral squamous cell carcinoma increased their glucose metabolic activity under normoxic conditions.
    PLoS One. 2021 Oct 22;16(10):e0254966.
    口腔がん細胞は、通常、低酸素下にあるが、転移時などのように細胞周囲酸素濃度が急増すると糖代謝活性を増大し、細胞活性を上昇させる可能性があることを明らかにした。
  2. Tagaino R, Washio J, Otani H, Sasaki K, Takahashi N.
    Bifacial biological effects of ethanol: acetaldehyde production by oral Streptococcus species and the antibacterial effects of ethanol against these bacteria.
    J Oral Microbiol. 2021 Jun 9;13(1):1937884.
    口腔Streptococcus属に対してエタノールが示す2面性(①アセトアルデヒド産生基質としての発がんリスク、②抗菌作用)を検討し、②を示す高濃度でも①のリスクがあることを明らかにした。
  3. Han S, Abiko Y, Washio J, Luo Y, Zhang L, Takahashi N.
    Green Tea-Derived Epigallocatechin Gallate Inhibits Acid Production and Promotes the Aggregation of Streptococcus mutans and Non-Mutans Streptococci.
    Caries Res. 2021;55(3):205-214.
    緑茶由来のエピガロカテキンガレート(EGCG)が、う蝕関連細菌Streptococcus属の酸産生抑制及び凝集促進を行うことで、う蝕抑制に貢献しうることを明らかにした。
  4. Sato-Suzuki Y, Washio J, Wicaksono DP, Sato T, Fukumoto S, Takahashi N.
    Nitrite-producing oral microbiome in adults and children.
    Sci Rep. 2020 Oct 6;10(1):16652.
    成人ならびに小児の歯面および舌上のマイクロバイオーム中の亜硝酸産生細菌種を網羅的に同定・算定し、それぞれのマイクロバイオームの特徴を明らかにした。
  5. Wicaksono DP, Washio J, Abiko Y, Domon H, Takahashi N.
    Nitrite Production from Nitrate and Its Link with Lactate Metabolism in Oral Veillonella spp.
    Appl Environ Microbiol. 2020 Oct 1;86(20):e01255-20. doi: 10.1128/AEM.01255-20.
    口腔内Veillonella属は、硝酸代謝を乳酸代謝とリンクすることで、その代謝活性を大きく上昇させることを明らかにした。また、その生化学的機序についても提案した。
  6. Kameda M, Abiko Y, Washio J, Tanner ACR, Kressirer CA, Mizoguchi I and Takahashi N: Sugar Metabolism of Scardovia wiggsiae, a Novel Caries-Associated Bacterium. Front. Microbiol. 2020. 11:479.
    早期小児う蝕(ECC)患者から多く検出されるスカルドビア菌は、耐酸性能、フッ化物耐性能が高く、さらには特異的な糖代謝機構「ビフィドシャント」を持つことで、う蝕誘発能が高くなる可能性を示した。
  7. Nyvad B, Takahashi N: Integrated hypothesis of dental caries and periodontal diseases. J Oral Microbiol. 2020 Jan 7;12(1):1710953. doi: 10.1080/20002297.2019.1710953. eCollection 2020. Review.
    生態学的プラーク説を深化・進化させ、う蝕と歯周病の病因論の統合を図った。とくに糖の役割に関し、う蝕発症要因だけではなく、高血糖による歯周組織の脆弱化を経て歯周病発症要因となる可能性を論じた。
  8. Tagaino R, Washio J, Abiko Y, Tanda N, Sasaki K, Takahashi N: Metabolic property of acetaldehyde production from ethanol and glucose by oral Streptococcus and Neisseria. Sci Rep. 2019 Jul 18;9(1):10446.
    口腔常在細菌がエタノールおよびグルコースから発がん物質であるアセトアルデヒドを産生する代謝機構と、さらには酸素濃度などの口腔環境因子がその産生に及ぼす影響を明らかにした。
  9. Manome A, Abiko Y, Kawashima J, Washio J, Fukumoto S, Takahashi N: Acidogenic Potential of Oral Bifidobacterium and Its High Fluoride Tolerance.Front Microbiol. 2019 May 16;10:1099.
    重度の小児う蝕患者から特徴的に検出されるビフィドバクテリウム菌について、特異な糖代謝機能「ビフィドシャント」がう蝕誘発能に関与していること、そして乳糖がその糖代謝機能の効率を上げることを明らかにした。
  10. Ishiguro T, Mayanagi G, Azumi M, Otani H, Fukushima A, Sasaki K, Takahashi N: Sodium fluoride and silver diamine fluoride-coated tooth surfaces inhibit bacterial acid production at the bacteria/tooth interface. J Dent. 2019 May;84:30-35.
    歯面-細菌インターフェイスにおいて、フッ化物塗布歯面が細菌の糖代謝によるpH低下を抑制することを明らかにした。
  11. Fukushima A, Mayanagi G, Sasaki K, Takahashi N: Corrosive effects of fluoride on titanium under artificial biofilm. J Prosthodont Res 62(1): 104-109, 2018.
    細菌を介したチタン腐食モデルを構築し、う蝕予防材料であるフッ化物のチタン腐食への影響について検討した。
  12. Morishima H, Washio J, Kitamura J, Shinohara Y, Takahashi T, Takahashi N: Real-time monitoring system for evaluating the acid-producing activity of oral squamous cell carcinoma cells at different environmental pH. Sci Rep 7(1): 10092, 2017.
    がん細胞の代謝活性を、酸産生活性を指標にリアルタイムに測定する新手法を確立した。また、本手法を用いて、pH環境が口腔扁平上皮癌細胞の代謝活性に影響を及ぼすことを明らかにした。
  13. Mayanagi G, Igarashi K, Washio J, Takahashi N: pH Response and tooth surface solubility at the tooth/bacteria interface. Caries Res 51(2): 160-166, 2017.
    歯質-細菌インターフェイスう蝕モデルを確立し、細菌が産生する酸に対する根面象牙質の溶解性とpH中和能が、歯冠エナメル質よりも高いことを明らかにした。
  14. Yamamoto Y, Washio J, Shimizu K, Igarashi K, Takahashi N: Inhibitory effects of nitrite on acid production in dental plaque in children 15(2): 153-156, 2017.
    小児の歯垢プラークによる酸産生に対する亜硝酸の抑制効果について検討した。
  15. Washio J, Ogawa T, Suzuki K, Tsukiboshi Y, Watanabe M, Takahashi N: Amino acid composition and amino acid-metabolic network in supragingival plaque. Biomed Res 37(4): 251-7, 2016.
    口腔プラークバイオフィルム中の各種アミノ酸の代謝とそのネットワークについて、メタボローム解析技術を用いて詳細に検討した。

分野問い合わせ

E-mail:OEB*dent.tohoku.ac.jp(*を@に変えてください。)
TEL:022-717-8295
FAX:022-717-8297

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