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若手研究者インタビュー
2020年1月24日掲載

豊かな長寿社会を目指して

~高齢者歯科ができることを探る~
加齢歯科学分野 小宮山 貴将 助教
2011年 東北大学歯学部 卒業
2015年 東北大学大学院歯学研究科 修了
2015年 東京都内歯科医院 勤務
2017年 東北大学病院 助教
2019年 東北大学大学院歯学研究科 助教

加齢歯科学分野のご紹介をお願いします。

当分野の医局員は10名余で決して大きな講座ではありませんが、すべての医局員が各々の目標に向かって日々、研究や診療に励んでいると理解しています。研究は、私が携わっている疫学研究のほか、顎口腔機能の解明を通じて高齢者の食べる機能を支えることを目的とした研究や、mfMRIを用いて咀嚼筋の形態や機能を検討する研究など多岐にわたります。これらの研究はいずれも日々の診療における疑問をバックグラウンドとしたものです。その根底には、高齢の患者さんを拝見するためには多角的な知識が必要であるとの共通認識があります。

現在、先生はどのような研究をされていますか。

私は、口腔に関する疫学研究を専門にしており、地域住民の皆様のご協力のもと、良好な口腔の状態や機能、保健行動が健康に過ごすためには重要である、と仮説を立てて研究を行っています。当分野は現在、2つの(コホート)研究に携わっています。一つが鶴ケ谷研究で、これは2002年より続く、本学医学系研究科公衆衛生学分野が主体となって実施した歴史のあるコホート研究ですが、健康寿命の延伸を歯科的観点からも検討したものです。もう一つが大迫研究で、これも世界を代表する循環器コホートですが、歯周病をはじめとする歯科疾患と高血圧や動脈硬化などの循環器疾患との関連を検討しています。

この道に進んだきっかけについて教えてください。

学生時代から、高齢者がいかに健康的に過ごせるか、それに対して歯科的にどういったことが求められるのかを考えていました。当分野に入局した際に研究テーマを決めるわけですが、私が何となく思い描いていたことと、当分野が携わっている鶴ケ谷研究の主要なテーマである健康寿命の延伸という単語が一致しましたので、そういった研究に携わってみたいと思ったのがきっかけです。今日まで様々な先生方のお力添えをいただきながら、やってきております。

日本補綴歯科学会第128回学術大会で奨励論文賞を受賞されたと伺いました。受賞した研究について教えてください。

これは先ほど紹介した鶴ケ谷研究の結果を纏めたものになります。2003年に仙台市鶴ケ谷地区にお住いの800名余りの高齢者の方に対して、補綴学会が提唱する咬合三角分類を用いて残存歯の残り方を調査し、日本における健康寿命の指標である要介護認定との関連について、約8年間追跡調査したものです。その結果、欠損形態によって推定される補綴治療の難易度が高いほど、機能回復やその後の栄養摂取に悪影響を及ぼし、最終的には要介護状態に陥りやすいことが示唆されました。翻って、天然歯同士の咬合支持をより多く有することが健康長寿に寄与することが示唆されました。

受賞者の平塚先生(左)と小宮山先生(右)
受賞者の平塚先生(左)と小宮山先生(右)

この賞はどのような論文に送られる賞なのでしょうか。

本賞は日本補綴歯科学会が若手研究者を対象に授与するもので、補綴歯科学会の文言をそのまま拝借しますと、研究の方法や目的に新規性があり、新しい分野を開拓する可能性のあること、とのことです。このような大変名誉ある賞を拝受できたこと、大変光栄に思います。また、学会論文賞というものもあるのですが、私と同じタイミングで分子・再生歯科補綴学分野の江草宏教授が受賞をされています。

歯学部卒業後、本学の大学院に進学されていますが、大学院進学のきっかけについて教えてください。

まずは、学生時代より「超高齢社会」という言葉をよく耳にしていましたので、そういった状況にも対応できる歯科医師になりたいと思っていました。また、それに関連して訪問診療もやってみたいと考えていましたので、それを行っていた本学加齢歯科学分野を迷わず選びました。あとは、東北大学の先生は親身な先生が多いのですが、加齢歯科学分野の先生はそれがより際立っていたというのも大きな理由です。

学生時代から、歯学研究科・歯学部の所属歴が長いですが、どのような点に歯学研究科・歯学部の魅力を感じますか。

他の大学のことは正直良くわからないのですが、学生と教授も含め教員とが、程よく有機的につながっているのが魅力なのではないでしょうか。また、歯学研究科も含め東北大学には世界の先頭を走っている先生が数多くいると認識しておりますが、そのような先生の存在を肌に感じながら研究ができる、そういった環境があることが大きな魅力と感じています。

歯学研究・教育を志す若手研究者・学生へメッセージをお願いします。

まだまだ若輩者なので何か申し上げる立場にないのですが、多くの研究は歴代の先生方の弛まぬ努力、周りの先生方の尽力のもと、遂行できていると認識しており、そのような状況を理解し、状況を鑑みて何をすべきかを考えることが私自身は大事なのではと思っております。

今後の抱負をお願いします。

この場をお借りしまして、これまでご助言、指導いただきました医局員の先生方、データを採取していただいた歴代の医局員の先生方、研究に参加していただいた地域住民の皆様に厚く御礼申し上げます。このように、周りの方々の支えがあって研究が成り立っていることを自覚し、今後も精進してまいりたいと思います。

(2019年12月発行のNEWSLETTER20号に掲載したインタビューの全文です。)

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